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藤原学園の『年中夢求』日記

〜今日も顔晴るみんなへ〜

得をした

森山's Honey Bucket 167


 ヒゲ先生は春になると「星くずの村」で採取した雑草を発泡スチロールのケース2つほどに移植して、よく大阪に持ち帰って来られた。

子どもたちに見せ、触れさせ、スケッチさせ、そして名前を覚えさせるためである。

 いわゆる雑草だから、花屋の店先を飾るような人目を引く華やかさはない。

しかし、その雑草の咲かせる花はどれも可憐だった。


 ジシバリ・ホトケノザ・オオイヌノフグリ・ペンペングサ・セイヨウタンポポ・オオバコ・ハルジオン・ヒメジオン・タチツボスミレ・アカザ・ハコベ・ジュウニヒトエ・ハハコグサ・コオニタビラコ・ヒメオドリコソウ・スズメノエンドウ・カラスノエンドウ…

 ヒゲ先生の授業の見学に入らせてもらっていた僕は、子どもたちと並んでスケッチし、彼らと競ってそれらの名前を覚えた。

 何週かにわたり、授業の一部を使って雑草のことを継続的に学び続ける。子どもたちが教室を訪ねて来るまでの間、雑草たちはベランダで陽の光を思う存分浴びているので、いつも青々と元気だ。2週目3週目と子どもたちは持ち前の吸収力でどんどん雑草の特長や名前を覚えていく。僕も負けずに覚える。

 ヒゲ先生が、「今日は森山先生に雑草のテストをしてもらいなさい。」とおっしゃると、子どもたちは新米の僕の前にいっせいに列をなす。

 ヒゲ先生は、「雑草は小学校の中庭や裏庭にいくらでも咲いている。この辺りの道端にだっていくらでもはえている!」と子どもたちに話された。

 なるほど…、まず教室で雑草に接し、その「名前」を知るという大切な経験をした子たちの次の段階として、自分の足と目で身の回りにある雑草を発見させる…、それがヒゲ先生の考えておられることだったようだ。何を隠そう僕自身も、今までまったく気にも止めて来なかった「雑草」に深く興味が持てるようになったのだ。



 「春」の小豆島合宿に子どもたちを連れて行ったとき、ヒゲ先生がに子どもたちに、真っ先に「『天の川』(星くずの村にある人工の小川)を覗いてきなさい。」と声を掛けられていた。

 子どもたちの多くは腹ばいになって、小川の中の非日常と出会う。

 そこには、小宇宙を思わせるウシガエルやアマガエルの卵の塊がいくつもが浮かび、無数のオタマジャクシが、戯れていた。ヤゴもいればメダカも泳ぐ。そんな世界が、子どもたちの多くを虜にしていた。


 季節ごとの星空の観測も島での大切な学習のひとつだった。
(今も真也学園長がその大切な伝統を継承しておられる。)

星々の美しい輝きに見とれながら星座を唱え、一等星をそらんじた。

ときには真冬の深夜に子どもたちを起こし、恐ろしいとも形容したくなるほど明るい「明けの明星」を、白い息で指先をあたためながら観測した。

 芝生広場に布団を敷いて寝そべって観測する「流星群」や、一人ひとりに双眼鏡を持たせて「ほうき星」を観測したこともある。



 
 「雑草」の名を知ること。「カエルの卵」を手のおわんですくい上げること。

 寒さに震えながら「金星」を見上げたり、夢中に「流れ星」を数えること。


 
 これらのどれ一つを経験していなくても、人生に大きな弊害はない。

 また、どれを一つ多く体験したからといって、それが物質的な豊かさと直結するわけでもない。

 これらのことはどれも「こうすればその結果はこうなる」という成果を得るための手段ではなかった。



 でも僕は、こうしたことを経験させてくれる「ヒゲ先生ワールド」に、

 両親のお陰でいざなってもらえた。

 「人生、とても得をしたなあ…」と今も喜んでいる。


 
 梅が香り、日差しに暖かさを感じはじめるこの時期、

 いろいろなことに対しての「感謝の芽」も膨らむ。


 白梅

 

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