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藤原学園の『年中夢求』日記

〜今日も顔晴るみんなへ〜

往く道

森山's Honey Buket376


義父は満89歳。

元小学校の校長先生であったからか、退職後おおよそ30年、毎朝夕の登下校時には必ず家の前に立ち、子どもたちに「おはよう。」やら「お帰り。」やらの声をかけながら、通学の安全を見守りを続けてきた。

同年代の親類の中でも際立って健脚で元気溌剌な父だった。

しかし、このところ少し気弱になって来たようだ。

それというのも、自慢の足腰が意のままにならなくなってきたからだ。

車椅子のお世話にこそなっていないが、このところ歩行時の杖は必需品となった。


そんな父に、たとえ車窓からでも美しい紅葉を見てもらえたら…と、家内が「比叡山辺りのドライブに行かないか?」と声を掛けた。

すると父は「大台ケ原に行ってみたい。」と返答したらしい。

「お父さん、大台ケ原はもう落葉していて、紅葉狩りには遅すぎるよ。」と家内が話すと…

「紅葉はいらん、わしは大台に行きたい…」と義父。


そんなこんなで、義父母と家内と僕の4人で、先の日曜日に大台ケ原に向かった。


幸いにも天候は快晴。秋晴れのドライブ日和となった。



終着点「大台ケ原ビジターセンター」へは国道169号から脇に入って約20キロのドライブウェイを走る。

ドライブウェイと言えども山道。対向車が来たらどうして行きかおうかとドキドキする小径も含まれる。

麓の谷間付近はまだ美しい紅葉が陽光に輝いていたが、山道を走り進めるうちに落葉した裸の木が目立ち始めた。


そんな道をかれこれ20~30分登った辺りに、西に大きく展望の広がった駐車スペースがあった。


父は「ここで車を停めてほしい。」と言った。

そこからは世界遺産「大峯奥駈道」が尾根に走っている大峰山系の雄大な風景が広がっていた。


「この景色が見たかった…」と父は満足そうに呟いた。


かつて自身も駆けた奥駈道。

若かった頃に夫婦一緒に眺めた大峰の山並。


「あそこが行者還、その隣が弥山そして八経ヶ岳…」と父は遠い目をしながら指差した。


父はここからの景色が見たいと強く思っていたのだ。


ややして終着点大台ケ原に到着したのち、父に

「今日はありがとう。よく連れて来てくれた。僕はもう大台ケ原に来られることはないと思う。今日はほんとうに素敵な時間だった。」と礼を言われた。


ふいに寂しくなった。


そしてこれからも父が再訪したいと思える場所を一つでも多く尋ね、出来るだけ一緒に出向きたい…と強く思った。


















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