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藤原学園の『年中夢求』日記

〜今日も顔晴るみんなへ〜

認めてくれた友だち

 森山’s Honey Bucket  65


 


 ひとたび降り始めると瞬く間にそこは銀世界になった。


 


 大阪生まれで大阪育ちの自分にはそれまで雪といえば


運動場の土混じりの茶色の勝った物体だった。が、そこは違った。


 


 


 小学校卒業と同時に移り住んだところは、


地方都市のうんと郊外にあった。


 


 我が家の裏には大きな蓮畑。


蓮畑の向こうは野菜畑。道を挟んで東側には広い田んぼが広がり、


その向こう側に神社の鳥居と社殿があった。


 


 しんしんと降り積もる雪は、


ふと気がつけば、蓮畑・野菜畑・田んぼそしてあぜ道を覆いつくし、


それらの境が見分けられなくなった。


 


 


 松本一茂君の家は蓮畑と野菜畑の少し向こう、うちの家から150メートル程先に建っていた。


 


 


 遮る建物が何もなかったので、僕の家の台所の窓からは


松本君の二階の勉強部屋の明かりを簡単に確認することができた。


 


 


 さて、中1の冬、ようやく140センチを超えた僕。


僕は学年では3番目のチビ。2番目が松本君。 


 大阪から引越したばかりの転入生の僕は、


同じ組で出席番号が近くかつチビだった松本君に真っ先に声を掛け、


友だちになってもらった。


2年と2ヶ月、僕が再び大阪へ戻ることになるまで僕らはずっと友だちだった。


 


 野比のび太そっくりの松本君は、


驚いたことに学年で最も足が速く(後に短距離走でインターハイにも出場したほど)、


しかも成績は常に学年1位だった。


 


 中学1年を終えようとする頃、松本君に歩み寄った僕は


彼に大宣言をした。


 


 「次の(中2の)中間テストで僕はお前に勝ってみせる!」


 


 かなりの勇気を奮い起こしてそう言った。


なぜそんなことを言ったのか理由は思い出せない。


 


 すると松本君は


「おもしろい。やれるものならそうしてみろ。」という意味の返答をにっこり顔でした。


 


 その日から僕は、人生で最も勉強したかもしれないと振り返ることのできる日々を過ごした。


 内容はともかく時間だけは松本よりたくさん勉強する。そう誓った。


もともとうんと賢い松本に勝利するには彼よりたくさんの努力をするべし!


単純明快な作戦だった。


 


 ほぼ毎夜、台所の窓のブラインドを開き、松本の部屋の明かりを確認した。


「むむ…、あいつまだやってる…。」


(実のところその時間に彼は明かりの灯った部屋で勉強をしていたんだかどうかわからない…でもそう思うことにした。)


 だから、テスト直前でもないのにずいぶん深夜まで僕なりに取り組んだ。


 


 笑える話だが、メンソレータムやアンメルツを鼻の下や目の下に塗ったり、サボテンの小さな鉢植えを机に置いたり、つまりそれで居眠り防止をしようと試みた夜もあった。


 


 ちなみに二人の仲はずっと良好だった。


大宣言の後も、わからない数学の問題がでてくると、彼を部屋に訪ねて質問をした。

彼もまた、ちゃんとそれに応じてくれた。


一緒にビートルズのレコードを聴いて歌った。

いっぱい喋った。いっぱい笑った。


彼の部屋にあった『エクソシスト』というオカルト映画のパンフレットを見ながら二人して怖くて震えてこともあった。


 


 ついにその時が来た。中2・1学期の中間テストだ。


 


 健気な?努力のおかげ?で 僕の成績は飛躍的に良くなった。


今でも得点を覚えているほどだ。人生マックスの得点だった。


 


 でも、彼には2点及ばなかった。


 


 「ごめん。やっぱりお前にはかなわんかった…」


 


 素直に謝りに行った。


 


 すると松本は

 


 「お前やるなあ!スゴイわ。おれも負けんように頑張るわ。」とほめてくれた。


 


 それまでの人生で誰にほめてもらったことより嬉しかった。


 


 たいせつな友だちが、無条件で僕を認めてくれている…そんな思いに心が震えた。


 


 


 


 頑張ろう!と自分で思ったときにがんばる。


 


 それでいいんじゃないか。


 


 効率的な方法でもなく、まして他人に誇れる作戦でもなかったとしても、


 


 自分が掲げた「めあて」のために、自分が一所懸命行動する。


 


 それだけのことでいいんじゃないか。


 


 


あの地方に雪が積もっているニュースを見ると、


中学生としてそれなりに輝いていた当時の自分を懐かしく思い出す。 


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